皆既月食

11月9日は皆既月食でしたね。
私は、お店の窓からちょうどよく見ることができたので、人生で初めて、こんなにゆったりとただ月を眺めるということに集中しました。
これまでは、流星群などと同じような感覚で「頑張らないと見られないもの」だと思っていたのに、何一つ頑張らずに見ることができたので、不思議な感覚でした。
多分、ゆったり眺めるためには、障害物が東京には多いのだと思います。

物理的な障害物や精神的障害物。

お店の同じ窓からは東京タワーも見えるのですが、この日は遠慮したのかライト点灯がなくて、月が欠け始めるあたりで星屑のようなキラキラキラーという煌めきだけありました。
なかなかに粋な計らいですね。

そして、欠け始めた月を見ながら、あの影の中に私自身の影も含まれるんだと思うと、急に世界が宇宙の範囲まで広がりました。今ここに座っている私のその先に宇宙があることが実感できるような感覚。
なぜならあの天体には私の影も含まれているのだから。

国立天文台 基礎知識より

この日はかなり大きな月ではありましたが、満月の一歩手前の月でした。

そして昨日は「十日夜」と言って、3回目のお月見の日。
日本のお月見は9月(十五夜)、10月(十三夜)、11月(十日夜)と3回あって、今年は9月と10月をなんとなく素通りしていたので、皆既月食と3回目が近かったことで月見を楽しむこともできました。

いろんなエンターテイメントが手軽に楽しめる今ですが、こんなに壮大な天体ショーを特等席で眺められたことは、久々にワクワクする出来事でした。

月に行くことが難しくない未来がもうそこにありますが、今のうちにこの風景を頭に叩き込んでおけば、月に行った時きっといろんなことを感じられそうな気がします。

ちなみに天王星の食も同時に起こっていましたが気がつきましたか?
私はなんとなくうっすら見えたような気がしたくらいでした。

月食の途中で帰宅しましたが、帰り道多くの人が足を止めて空を見上げて、月の写真を撮ったりしているのを見て、やっぱりショーなんだなぁと思ってしまいました。
舞台や映画を見にいくと、客席が用意されていて舞台かスクリーンの方に向けられているので強制的にそちらを向きますが、道端の人々の反応を眺めていると、この地球そのものが劇場化しているように私には思えて、人の心は数千年前も今もあまり変わらないのだろうなと思ったりしました。

このショーの演出に自分達が登場しているということに、皆さんは気がついていたのでしょうか。
今回の月食で最も私がワクワクしたのは、自分の影を遠くの天体に感じられたことでした。